「属人化」の解消で、いきなり手順書を作ってはいけない理由
文:戸田 拓海(株式会社Mathenaut 代表取締役)
「あの人がいないと、その仕事が止まる」。ご相談の中で一番多いのが、この属人化の悩みです。そして多くの会社が、解消しようとしてまず手順書づくりから始めます。実はこれ、順番が1つ違っています。
手順書から入ると、なぜ失敗するのか
属人化を解消したい。そう考えたとき、多くの会社が「じゃあマニュアルを作ろう」となります。方向としては間違っていません。ただ、この進め方だと高い確率で途中で止まります。理由は3つあります。
- その業務を一番よく知っている人が、一番忙しい。書く時間が取れない
- どこまで細かく書けばいいのか決まっておらず、作業が終わらない
- 苦労して書き上げた頃には、やり方が変わっている
つまり、書く対象を絞らないまま書き始めているのが問題です。全部を残そうとするから終わらないし、終わらないから使われません。
最初にやるのは「棚卸し」
手を動かす前に、まず一覧を作ります。きれいな資料である必要はなく、表計算ソフトに次の項目を並べるだけで十分です。
- 業務の名前(「請求書発行」など、粗くてよい)
- 担当している人
- 頻度(毎日/週次/月次/不定期)
- その人以外にできる人がいるか(いる/怪しい/いない)
- 止まったときの影響(大/中/小)
ポイントは、ここを1〜2時間で終わらせることです。精度を上げようとすると、この段階で息切れします。ざっくりでいいので全体を並べきることのほうが、はるかに重要です。
全部を標準化しようとしない
一覧ができたら、「頻度」×「止まったときの影響」で優先順位をつけます。最初に手をつけるのは、頻度が高くて影響も大きい業務。ここだけです。
逆に、年に1回しか発生せず、止まっても数日待てる業務は、後回しで構いません。属人化していること自体は問題でも、いま解く問題ではないからです。
手順書は「使う人」に合わせて作る
対象を絞ったら、ようやく手順書です。ここでも1つコツがあります。書く人の目線ではなく、使う人の目線で作ることです。
想定読者を1人に決める
「入社3ヶ月の人が、これを見て1人でできるか」。この基準を決めておくと、どこまで書くべきかで迷わなくなります。
文章より、画面のスクリーンショット
文章で丁寧に説明するより、画面をそのまま貼って矢印を1本引くほうが速く、正確に伝わります。作る側の負担も軽くなります。
置き場所を1か所に決める
意外とここで失敗します。せっかく作っても、どこにあるか分からなければ存在しないのと同じです。フォルダ構成を凝る必要はなく、「業務のことはここを見る」という場所を1つ決めるだけで十分です。
まとめ
属人化の解消は、次の順番で進めると詰まりにくくなります。
- 1〜2時間で業務を棚卸しして、全体を並べる
- 要らない業務・重複している業務をまず消す
- 頻度×影響で、手をつける業務を絞る
- 絞った業務だけ、使う人目線で手順書にする
いきなり完璧を目指さず、影響の大きいところから1つずつ。これが結局は一番の近道です。